第一回勉強会 [エトピリカ〜海鳥の減少と漁業の問題〜]
こんばんは。鳥班61期班長です。
今回はエトピリカを中心として「海鳥と漁業の問題」についてまとめていきます!
エトピリカの減少から見る海鳥と漁業の問題
そもそもエトピリカってどんな鳥??
エトピリカは少し困ったような顔をした海鳥です!
エトピリカ(Tufted Puffin):Lunda cirrhata
全長39cm 翼開長66cm
特徴:くちばしが両端から押しつぶされたように扁平で大きい。
(出典:財団法人 日本鳥類保護連盟.鳥630図鑑.日新印刷株式会社,1988,410p)
※一般的なカモメ(Larus canus)は"全長45㎝ 翼開長115㎝(出典:鳥630図鑑より)"なので、
カモメよりも少し小さい鳥なことがわかりますね!
また、夏と冬で姿がガラッと変わります!
エトピリカが、夏羽から冬羽に生え換わり始めています。
— 葛西臨海水族園[公式] (@KasaiSuizokuen) 2020年10月28日
1枚目:夏羽
2枚目:冬羽
現在、夏と冬の羽を同時に観察できるチャンスです!#おうちでかさりん #tslp_h pic.twitter.com/dwiHw5oobE
夏羽と冬羽で全く別人(鳥?)ですね(笑)
エトピリカが減っている?!
エトピリカは環境省版レッドリスト(※日本に生息又は生育する野生生物について、種の絶滅の危険度評価してリストにまとめたもの。)では、
絶滅危惧ⅠA類とされています。
これは、日本国内でごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いものということを表しています。
その要因として環境省のホームページでは、
①流網、底刺網への混獲。
②ユルリ島とモユルリ島へのドブネズミの侵入。
③地球温暖化との関係が指摘される海水温の変化。
の3つが挙げられています。
このなかでも、今回は①流網、底刺網への混獲について触れていきます。
写真提供 USFWS から Pixnio
魚を捕るための網に絡まって死んでしまうエトピリカたち
①流網、底刺網への混獲について、そもそも"混獲"とは何なのか。全く聞きなれない言葉ですよね。
混獲
意味:漁業活動によって海洋動物が誤って漁具に絡まり死亡すること。
欧米では「フィッシャリーズ・バイキャッチ」と呼ばれる。
(出典:社会法人 海と渚環境美化推進機構.海鳥についてもっと知ろう.)
簡単に言えば、魚を捕るために用いる網に絡まって死んでしまうということですね。
海鳥が絡まって死んでしまう原因となっている主な漁具には
①表層流し網(ヒョウソウナガシアミ)、②底刺し網(ソコサシアミ)、③延縄(ハエナ)
の3つ挙げられます。
この3つについて解説していきます!
①表層流し網、②底刺し網
表層流し網も底刺し網も網をカーテンのように垂れ下げ、魚が移動する経路を塞ぐように設置します。
[刺網]農林水産省:漁業種類イラスト集より
このため、海鳥が潜水中にその網に突っ込んでしまい、絡まって逃げられなくなり、溺れて死んでしまうのです。
これらの網に絡まってしまう海鳥のほとんどは潜水能力の優れた海鳥になります。
潜水能力の優れた海鳥には、ミズナギドリ類やウミスズメ類が挙げられ、これにはオオミズナギドリやウミガラス、ウトウ、そしてエトピリカなどが含まれています。
③延縄
延縄は枝縄の先端の釣り針にサンマやイカを装着し、海中に沈めます。
それらは冷凍品なので、海に入れた際に5〜15秒ほど海表面に浮いてしまいます。そのため、海鳥がそのサンマやイカを掬い上げて飲み込んでしまうのです。
飲み込んだことにより喉に針がひっかかってしまった海鳥は、幹縄が海に沈められると一緒に海の中へと引きずり込まれてしまい、溺れて死んでしまうのです。
この海鳥には、アホウドリ類やミズナギドリ類が挙げられます。
どうやって"この問題"を解決する?
「網をどうにかすればいいんじゃないの?」
と思うかもしれません。
ですが、海鳥の習性上刺し網や流し網をいくら改良しようと混獲を防ぐことはできないのです!!
そのため、エトピリカの繁殖地周辺を保護区にし、船舶の航行禁止や漁業活動の禁止などの法的な規制をすることが、具体的な解決方法となります。
漁業に関する問題に対して、日本が現在行っているエトピリカの保護増殖事業は、
「海鳥混獲防止のため、漁具に工夫をするなどの取り組みを浜中漁協と連携して実施」
のみなのです!!!!
エトピリカの繁殖地周辺を早急に保護区にすることが望まれます。
写真提供 Hillebrand Steve, USFWS から Pixnio
☆エトピリカの保護活動
参考文献:これらの書籍はすべて日大生物資源科学部の図書館で借りれます!
①社会法人 海と渚環境美化推進機構.海鳥についてもっと知ろう.
②財団法人 日本鳥類保護連盟.鳥630図鑑.日新印刷株式会社,1988,410p
"エトピリカ". 環境省. (2022年11月30日アクセス)